FPGA 実験の遠隔化に関する学会発表(2021/9/29)

ここでの話は、以前の記事(J1実験:論理回路(オンライン実験)の紹介(2020/8/14)J1実験:論理回路の紹介(2019/7/10))の続きとなっています。

発表内容について

(1) 2020 年度の取り組みをまとめ、情報処理学会の「コンピュータと教育研究会」で発表した内容(「FPGA を用いた論理回路設計実験の遠隔実践」、研究報告コンピュータと教育(CE),2020-CE-157(13),1-8(2020-10-31),2188-8930)が認められ、2021 年度の山下記念研究賞をいただきました。また、発表のさいに以下のようなコメントをいただきました。

  • 私も実機を用いずに、シミュレーションだけではいけないだろうなと思います。
  • 実装パワーに圧倒されました。
  • この課題を遠隔操作で行なって、レポートにするのは学生にとってはやや大変そうですね。

(2) 2021 年度の報告(「FPGA を用いた論理回路設計実験を遠隔化した結果に関する報告」)を SSS2021 のポスターセッションで行ないました。以下のようなコメントをいただきました。

  • 今となっては別に実機を操作せず全てをシミュレーションするのでも構わないのではないでしょうか。
  • たとえば、小学校で習う炎色反応を CG で実現する教材を提案したところ、教師から「そんなもので実体験を通した教育できるか」叱られました。この課題も同じ問題がありそうですね。

総じて、技術が進み虚実の境界が揺らぎ始めている現代ならではの深い問題を孕んでいると考えさせられました。

遠隔実験を通して分かったこと

以下の 2 点を紹介します。

1. 自宅でいつ実験しているか

遠隔化により、学外から課題に取り組めるようになったので、これまでの CED の開室時間内でしか作業できないといった時間的な制約も緩和することにしました。その結果、個々の学生のライフスタイル(朝型・夜型、この時間はバイトしている、この時間は趣味に没頭している、など)の違いが反映されたのだと思いますが、課題に向き合っている時間帯が広がっていることがわかりました。以下のグラフは全ての組の学生をまとめて、どの時間帯に作業していたのかを表しています。深夜から早朝にかけて課題に取り組んでいる人も少なからずいますね。

2. 対面と遠隔の実験の進み具合の差

全受講生が遠隔での作業を行なった 2020 年度に対して、2021 年度は 141 名の学生のうち 76 名が対面つまり CED で、65 名が遠隔で課題に取り組みました。ふたつのグループに違いはあるでしょうか? この問いに対する調査は始まったばかりですが、違いの一例を示したいと思います。本課題は 7 つの問題からなり、個々の問題を解くたびに教員や TA のチェックを受けることになっています。そこで不備が見つかれば、学生は再考することとなります。見方を変えればチェックにパスした回数(全部パスすれば 7)は解答の進み具合とみなせます。対面と遠隔のチェック(にパスした回)数を以下のグラフに示します。

どの組も、遠隔よりも対面でのチェック数が多いことが見て取れると思います。理由はさまざま考えられ、これから検証してまとめる予定ですが、その知見を遠隔での講義や演習・実験などに活かすことができると考えています。